大会長挨拶

第22回日本中性子捕捉療法学会学術大会
大会長 田中 浩基
(京都大学複合原子力科学研究所
粒子線腫瘍学研究センター
粒子線医学物理学研究分野 教授)
このたび、第22回日本中性子捕捉療法学会学術大会の大会長を拝命いたしました、京都大学複合原子力科学研究所の田中浩基です。本大会の開催にあたり、謹んでご挨拶申し上げます。
本学術大会は、2026年7月30日(木)から8月1日(土)までの3日間、京都大学百周年時計台記念館にて開催いたします。日本における中性子捕捉療法(NCT)研究の歩みと深く関わってきた京都大学において本大会を開催できることは、極めて意義深いものと考えております。
本学術大会のテーマは「伝統革新」といたしました。我が国のNCT研究は、京都大学研究用原子炉(KUR)をはじめとする国内の研究用原子炉を基盤として、医学、物理学、工学、薬学、化学、生物学といった多様な分野の研究者が結集し、学際的な協働のもとで発展してきました。このように培われてきた研究の伝統と学術的基盤を礎として技術開発が進められ、加速器を用いた中性子捕捉療法システムおよびホウ素薬剤が、企業の尽力により医療機器・医薬品として承認されるに至りました。これにより、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は研究段階から実臨床へと大きな転換点を迎えるに至りました。
一方で、世界的にもNCT研究において重要な役割を果たしてきたKURは、2026年4月23日をもって運転を停止します。KURにおける中性子照射場は、我が国のNCT研究を支える中核的基盤として、多くの研究者と人材を育成し、数多くの学術的成果と臨床応用への道筋を切り拓いてきました。その運転停止は一つの時代の節目を意味しますが、KURで培われた学術的遺産と研究精神は、今後のNCT研究および医療の発展においても、確実に継承されていくべきものです。本学術大会では、KURをはじめとする研究用原子炉で築かれてきたNCT研究の歴史と成果を改めて振り返り、その意義を次世代へとつなぐ機会としたいと考えております。
現在、加速器を用いた中性子捕捉療法システムによる保険診療が開始され、各医療機関の不断の努力により、より多くの患者さんにBNCTが実施されるようになりました。さらに、さまざまな方式や特性を有する加速器型BNCTシステムの開発が進み、複数の適応疾患に対する臨床試験も着実に展開されています。装置の同等性に関するガイドラインの策定も進められており、BNCTは安全性と信頼性を高めながら、より革新的な治療へと進化しつつあります。
京都大学百周年時計台記念館という、本学の歴史と学術を象徴する場において開催される本学術大会が、「伝統革新」というテーマのもと、原子炉BNCTから加速器BNCTへと連なる日本の強みを改めて確認し、これまでの研究を総括するとともに、次のステージとなるBNCTの臨床と研究へと歩みを進めるための新たな契機となることを期待しております。多くの皆様にご参集いただき、分野を超えた活発な議論と交流が行われることを心より願っております。