大会長挨拶
第29回日本遠隔医療学会学術大会(JTTA2025 Nagasaki)
大会長 吉嶺裕之
社会医療法人春回会
井上病院 院長

第29回日本遠隔医療学会学術大会の開催にあたり、一言ご挨拶申し上げます。
本大会は2025年10月24日(金)、25日(土)の2日間、出島メッセ長崎にて現地開催とオンデマンド配信を組み合わせて実施されます。全国から多数の皆様を長崎にお迎えできることを大変嬉しく思います。
長崎での開催は、2014年に長崎大学病院の本多正幸先生が大会長を務められて以来11年ぶりとなります。あの大会で、私を含む数名の先輩方とともに「睡眠遠隔医療分科会」を立ち上げたことを、今も鮮明に思い出します。この長崎の地で再び学会を開催できることは、私にとっても感慨深いものがあります。
現在、日本は急速な人口減少と少子高齢化という大きな課題に直面しています。医療人材は都市・地方を問わず不足し、医療の専門分化が進む一方で国民が求める医療水準も高まっています。感染症から生活習慣病への疾病構造の変化、自然災害の頻発、多職種によるチーム医療の拡大など、私達を取り巻く医療環境は大きな転換期を迎えています。そのような中で、ICTやAI、デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用し、遠隔医療を社会に実装していくことは避けて通れない課題です。世界と比較すると日本での普及は周回遅れの感も否めませんが、だからこそ今こそ加速させるべきだと考えます。
このような背景から、本大会のテーマを「人口減少社会における遠隔医療の社会実装」といたしました。限られた医療人材で最良の医療を多くの人々に届けるために、遠隔医療が果たす役割は極めて大きいといえます。技術導入にとどまらず、診療報酬や制度設計、教育や人材育成、患者エンゲージメントまで、多角的な議論が不可欠です。本大会をそのための場にしたいと願っております。
プログラムは、大会長講演、学会長講演、招待講演をはじめ、シンポジウム、分科会、一般演題と多彩です。オンライン診療、睡眠遠隔医療、救急や周産期医療、がんや心不全のモニタリング、AI・デジタル基盤技術の応用、さらには離島・へき地における実践的な事例まで幅広いテーマを扱います。現場で培われた実践知と最新研究を結びつけることができるのは、本学会ならではの特色です。
長崎は、古くから海外に開かれた交流の地であり、新しい文化や技術を受け入れてきました。学会当日は秋の穏やかな気候の中で、美しい景観や歴史、食文化もぜひ楽しんでいただければと思います。出島メッセ長崎はリニューアルされた長崎駅に直結し、アクセスも便利です。
本大会が、学術的な探究にとどまらず、多くの出会いと交流を生み、遠隔医療の未来を共に切り拓く力となることを心から願っています。最後に、本大会の準備にご尽力いただいた関係各位に厚く御礼申し上げ、ご挨拶といたします。